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遠隔教育の比較研究

諸外国における遠隔教育で教育を行う実態と、それを取り巻く国の規制や関与の実態に関する調査研究

  • 文部科学省「先導的大学改革推進委託事業」
    • 委託先: 香川大学
    • 委託期間:平成19年12月1日〜平成21年3月31日

研究目標と実施方法

<目標>

  • 遠隔教育に関するワークショップ開催
    • 遠隔教育は、高等教育の国際化の進展に伴い、その重要性がますます増大している。そこで、諸外国における遠隔教育に関係する研究者ならびに行政担当者を香川大学に招き、また、日本側からも、香川大学の教職員に加えて、遠隔教育におけるそれぞれの分野(1. 情報通信及び学習技術、2. 大学管理及び教育指導ならびに3. 国の規制・関与等)に関する見識者・専門家を招き、香川大学およびレスター大学で会議やワークショップを開催する。
  • 遠隔教育に関する国際研究集会の開催
    • さらにその成果を基に国際研究集会を開催し、遠隔教育で教育を行う実態について、情報教育・大学管理・国の規制・関与について詳細な調査を行うとともに、問題点について討議し、遠隔教育の今後のあり方についての提言を行う。同時に調査成果を出版物等で公開することにより、高等教育行政施策の企画立案及び改善に資することを最終目標にする。
  • 最終目標ー遠隔教育の現状とその展望ー(村山私見:2007年12月18日時点)
    • 今後の高等教育のあり方を考える上で、最も重要な目標は、遠隔教育=e-Learningという一般的理解の克服であろう。この調査研究プロジェクトを踏まえて、さらに詳細な検討が続けられる必要がある。
    • 英国政府(Higher Education Academy)のe-Learningへの対応実態とその歴史を観察するならば、2000年頃には、過度なe-Learningへの期待が存在し、積極的な多くの施策が試みられた。しかしその後、e-Learningの限界も明確化され、2005年から2010年にかけてのStrategic Planでは、e-Learningはそれほど全面に打ち出されているわけではなく、e-Learningの新たな棲み分けとむしろ広義の遠隔教育の展開が期待されるようになってきている。
    • それに対して韓国政府の場合、2000年頃から現在に至まで、Cyber Universityへの積極策を展開し、政府の積極的な施策が続いているように思われる。日本の場合も、経済産業省を中心に積極策を展開している場合があり(経済産業省商務情報政策局情報処理振興課編『eラーニング白書 2007/2008年版』(東京電機大学出版局、2007年8月)、実際、福岡アジアビジネス特区の一環で、キャンパスのない、日本で最初のサイバー大学株式会社が設立された。しかし、それはあくまでも経済特区における事例であり、大学教育のあり方を調整・管理している文部科学省においては、今後、大学設置基準の見直しに着手するかどうかについては、躊躇するところがあるようである。事実、今年、日本のサイバー大学における携帯端末の利用による大学教育の実現は認められなかった。いずれにしても、日本政府においても、今後の大学教育に関わる世界の状況、情報の整理と指針の確立が急務となっている。
    • しかし、ビジネスとしてのサイバー大学・ICT(Information and Communications Technology)奨励(経済産業省)対最高学府としての大学の質の確保(文部科学省)という対抗関係は必ずしもオールタナティブな枠組みとして考える必要はないであろう。ブロードバンド普及を前提条件として、種々の学問分野における特性あるいはトレーニング型教育が向いているMBAなどと実地教育やディスカッションが重視される教育分野など、学問の個性に従った柔軟な対応が必要になると考える。その意味でそれぞれの学問分野からみた検討が特に重要である。
    • つまり、フィジカルな教育とヴァーチャルな教育のバランスを考えて行く必要があると考えている。遠隔教育は、演習などにおいて、一定期間をおいて集合と離散を繰り返す時間的な意味での遠隔教育、そして、フィールドワークやインターンシップなどの現場主義の積極的展開による遠隔教育というように、より広い視角からのe-Learning再検討が肝要であろう。

<実施方法>

  • ワークショップと国際研究集会の連動
    • 国際研究集会の開催にあたり、単に関係者を招待して話を聞くだけではなく、事前に複数のワークショップを開催し、関係者に対するヒアリング等も行って種々の資料収集した後に、国際研究集会を開催する方法を取り、適任となるスピーカーを選定する。
  • レスター大学を軸に国際比較研究を展開
    • また、いち早くエージェンシー化が進行した英国の大学について、特に地方都市に立地しながら大学評価の高いレスター大学についての調査研究に重点を置き、綿密な調査を行うと同時に、諸外国(韓国・アメリカ・ドイツなど)との比較研究に基づき、日本の高等教育環境に最も合致した政策を立案するための情報を収集する。

分析手法

  • ワークショップの論点ならびにテーマ設定
    • 比較研究に基づく政策立案
      • 英国レスター大学の調査研究を基盤にして、遠隔教育に関わる諸課題を整理しつつ、諸外国の遠隔教育の比較研究を行うことにより、有意義な政策立案を導きだすことができる。
    • 三つの問題領域
      • ただし、遠隔教育においては、いくつかの克服すべき課題があると推測され、それぞれの次元において、分析方法も異なってくると考える。この事業では、以下の三つの問題領域を設定することにより、それぞれにおいて専門的・分析的アプローチを採用し、調査結果をより精緻なものにする。
    • 第1部門:遠隔教育における情報通信及び学習技術
      • 情報通信技術の長足の進歩により、遠隔教育は一般的には容易になったと考えられるが、国を超えた遠隔教育は種々の事情により必ずしも簡単ではない。例えば、必要なソフトなどについても、各国において付加されるライセンス費用などが大きく異なる場合がある。このような情報通信技術そのものにまつわる問題と同様に、学習技術についても検討する必要がある。
    • 第2部門:遠隔教育における大学内での管理及び教育指導体制
      • すでに上で述べたように、遠隔教育におけるデメリットをいかに防ぐか。単なる知識の伝授ではない遠隔教育が望まれるとするならば、新たな(仮想)キャンパス像の構築が可能となるような教育指導体制ならびに大学の管理体制についての検討が必要である。
    • 第3部門:遠隔教育における国の規制や関与の実態
      • 最後の論点は、遠隔教育における国の規制や関与の在り方に関する諸外国の実態把握である。遠隔教育における大学設置基準や通信法などの規制・管理はグローバル的に事業を展開する上で今後更に重要になってくると思われるが、この点に関しては、レスター大学における調査においても十分に把握できていない。英国の事情を中心に、諸外国の実態把握が必要である。
  • 3部門の同時進行における調査研究
    • 上記の3部門では、それぞれ観点が異なるが故に分析手法も異なる。これら3部門について、それぞれ学識者や専門家を配置し、同時進行で調査研究を進める予定である。香川大学では、教育学部、経済学部、法学部、医学部、農学部、工学部,その他教育研究機関ならびに事務局も含めた全学の教育研究資源を有効に活用した上で分析を行う。
    • 3部門において、同時進行で調査を行いつつ、ワークショップなどを開催して研究成果を蓄積し、それらの(中間)結果を踏まえて、国際研究集会において総合的な討論を行う。特に国際研究集会においては、レスター大学を中心にした英国の実態把握を基盤に、諸外国の比較を重点的に行う。このような調査研究を行うことで研究期間をある程度絞り込むことができる。

組織体制

  • 責任体制と組織
  • 責任者と責任部局
    • 責任者:一井眞比古(学長)、阿部文雄(副学長・教育担当理事)、前田肇(副学長・学術担当理事)ならびに村山聡(教育学部教授・遠隔教育調査研究チーム代表)
    • 責任部局:教育学部、大学教育開発センター、総合情報基盤センター
    • 事務局設置場所:教育学部キャンパス
  • 実施体制:遠隔教育調査研究チーム
    • 統括部門:代表 村山 聡(教育学部)、副代表 高木由美子(教育学部) 、副代表 石本誠之(教育・学生支援部長)
      • 教員15名(内コアメンバー;10名、アドバイザー;5名)+事務職員6名(内コアメンバー;4名)+調査研究チーム専属スタッフ2名=計23名(内コアメンバー;16名)
    • 第1部門:遠隔教育における情報通信および学習技術
      • 代表:高木由美子(教育学部)
      • 構成メンバー:林敏浩(総合情報センター)、寺尾徹(教育学部);アドバイザー:最所圭三(工学部)、原量宏(医学部)、深田和宏(農学部)
    • 第2部門:遠隔教育における大学内での管理および教育指導体制
      • 代表:村山聡(教育学部)
      • 構成メンバー:中西俊介(工学部・大学教育開発センター調査研究部長)、原直行(経済学部);アドバイザー:早川茂(農学部)、板野俊文(医学部)
    • 第3部門:遠隔教育における国の規制や関与の実態
      • 代表:平篤志(教育学部)
      • 構成メンバー:松尾邦之(法学部長)、村山聡(教育学部)、高木由美子(教育学部)、ポール・ジェラード・バテン(教育学部)、宮島美花(経済学部);アドバイザー:片山健至(農学部)
    • 事務部門
      • 代表:石本誠之(教育・学生支援部長、コアメンバー)、副代表:瀬戸修一(教育学部・事務長補佐、コアメンバー)
      • 調査研究チーム専属スタッフ(遠隔教育調査研究員):林 恵(研究事務部門・コアメンバー)、宇根山絵美(研究事務部門・コアメンバー)
      • 連携協力事務職員:後藤文郎(学務グループ・リーダー、コアメンバー)、若井亜希子(経理グループ・チーフ、コアメンバー)、坪井倫子(教育学部・学務係係員)、尾松俊嗣(医学部・ 学務係専門職員)、大熊麻里(工学部・学務係係員)、中塚紗和子(農学部・学務係係員)
    • 連携協力グループ
      • 1.各キャンパス代表:学部長等部局代表ならびに各キャンパス事務長
      • 2.大学教育開発センター・センター会議:同センター長ならびに各学部代表委員
      • 3.総合情報センター・専門委員会:同センター長ならびに各学部等部局代表委員
      • 4.学術国際交流委員会:同委員長ならびに各学部および専門職大学院等代表委員

今後の計画と資料

会議の記録

  • 第1回遠隔教育調査研究会議
    • 日時:2007年12月10日(月)、午前10時から12時
    • 場所:第1会議室
    • 議題:委託事業の概要について
  • 第2回遠隔教育調査研究会議
    • 日時:2007年12月11日(火)、午後4時から6時
    • 場所:教育学部国際交流室
    • 議題:遠隔教育に利用する機種とソフトについて
  • 文部科学省訪問
    • 日時:2007年12月17日(月)、午後2時から4時
    • 場所:本省6F大学振興課
    • 議題:委託事業の事業計画について
    • 出席者:村山、高木、石本、大学振興課および専門教育課
  • 第3回遠隔教育調査研究会議
    • 日時:2007年12月18日、午前10時から午後4時
    • 場所:共同利用室2および村山研究室
    • 議題:今後の具体的計画について

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  • 第1回遠隔教育調査研究セミナー Seminar No.1.pdf(807)
    • 日時:2008年1月21日、午前10時から12時
    • 場所:教育学部国際交流室
    • 講師:宇根山健治(岡山大学工学部 名誉教授)
    • 演題:有機合成化学研究の最先端と遠隔教育(仮)
    • 備考:宇根山先生は米国化学会賞(ACS Award for Creative Work in Fluorine Chem. 2007)を受賞されています。