舞鶴地方史研究会で、科研費基盤B「モンスーンアジアの小農経済:産業革命期日本の環境史的地域研究」報告会を開催します。この研究プロジェクトも3年目の終盤となり大詰めを迎えています。本研究では、その研究対象のひとつとして舞鶴・福知山地域をとりあげ、地域の人びとと自然環境の関わり合いの復元、特に自然科学としての水文気候学的アプローチとの新しい共同の在り方を探求してきました。
舞鶴地方史研究会は、ICEDSの協定メンバーでもあり、本科学研究費プロジェクトにおいても密接に連携をしてきたところです。このたび、その舞鶴地方史研究会の例会において、本科研費プロジェクトの報告会開催の運びとなったものです。
今回は、舞鶴・福知山地域をしばしば襲う水害(洪水・旱害)に焦点を絞り、郡村誌による地域叙述・描写と自然科学による地域分析・描写における出会いが、どのように可能かについて探究します。郡村誌の気象・気候に関連する項目の数量化に基づく地域理解と水文気候学的地域理解とは整合性があるのかどうか。また、近代以前の人間の自然把握としてどのように「台風」や「モンスーン」といった現象把握は成立しているのか。多くの探求課題が残されています。
水文気候学的アプローチは、気候変動研究の進展のもとで、大量の気候モデル計算結果を共有するフェーズに入っています。とはいえ、気候モデルによる気象観測時代以前の気候の再現には課題が多く残されています。これらのデータはどのように歴史研究に新しい視点を開くのか、検討します。

遠隔でのご参加は、こちらの申し込みフォームから

日時

2023年2月18日(土)13時00分~16時00分(12時45分受付)

会場

西公民館(ゆうさい会館)201会議室
(舞鶴市南田辺1)

・会員外の方のご参加も可能です(参加費無料)。
・コロナの状況により急な変更をする可能性があります。当会ホームページでご確認の上ご参加下さい。
連絡先:廣瀬 邦彦 090-6240-8951

報告者

村山 聡(香川大学教育学部名誉教授、研究代表者)
東 昇(京都府立大学文学部教授)
服部 亜由未(愛知県立大学日本文化学部准教授)
寺尾 徹(香川大学教育学部教授)
石塚 正秀(香川大学創造工学部教授)

報告会の概要

1.近世・近代の歴史研究における面的アプローチ
-郡村誌 -明治前期の土地利用図

2.歴史データに基づく豪雨・台風の復元
-1953年、1959年、2004年の豪雨・台風を中心に

3.ディスカッション

報告会の趣旨(村山 聡)

人為的な活動が地球を変えるという危惧は、原子力爆弾が世界に拡大する状況において、地球を破壊できるだけの兵器能力を人間が備えることができたという時代にもありました。しかし今や、人間の日常的な生活が、その生活自体を破壊する自然災害につながるという危機が現代の気候変動です。そして、人類は現在の極端気象そして地球温暖化という危機的状態に対処するために、地球温暖化ガスの削減そして声高にSDGs推進を進めています。それは常に気候危機の将来予測と連動し、そこにのみ依拠して
議論をしていることが問題だと思います。
というのも、歴史上、人類は日常的に気候危機に直面し、常にそれに対応する歴史を描いてきました。例えば、舞鶴や福知山の場合、1953 年の台風 13 号の被害そしてそこからの復興を思い起こさせます。それを人類と自然との間の環境史と呼ぶことができると思います。人類だけの歴史でもなく、また、自然だけの歴史でもないのが環境史です。実は、将来予測のみでは危機感を植え付けるだけであり、将来への人類の挑戦をより良きものにするわけではないと考えます。
無数の過去のそれぞれの地域の環境史あるいはその場に生きる人びとのローカルな個々の地域に密着した歴史は、それぞれの歴史の壮大な実験場、つまり、それぞれの地域環境そして歴史的地域文化として理解する必要があると思います。それを地方史と呼ぶことも可能でしょう。今回の報告会では、日本学術振興会の研究助成である科研・基盤(B)(20H01523)のこれまでの研究成果の一部として、舞鶴・福知山の環境史を題材に、文系と理系の研究者の協働として、我々が考え、実証してきた内容をみなさんにお伝えしたいと考えています。
すでに長く舞鶴の地域史研究を遂行してきた研究仲間の東昇氏もメンバーの一人ではありますが、ほぼ土地勘のない我々にとって、その地域の歴史に造詣の深いみなさまのご意見をお伺いする機会になりますことを切に願っております。

リーフレット