歴史
ICEDSの設立前史
遠隔教育に関する調査研究プロジェクト(H19-20年度)
平成19年度および20年度の文部科学省「先導的大学改革推進委託事業」において、調査研究テーマ「④諸外国における遠隔教育で教育を行う実態と、それを取り巻く国の規制や関与の実態に関する調査研究」の実施が、グラム・バングラとの具体的な交流の出発点であった。
遠隔教育国際ワークショップ(H20/11/3-7)
この委託事業のもと平成20年11月3日~11月7日にかけて開催した遠隔教育国際ワークショップ「International Workshop on Water Culture and Distance Learning: Europe, South-Asia, and Japan」では、遠隔教育の重要な課題として、現場主義的な調査研究と遠隔教育との相互関係についての意見交換や、水文化に関する国際的な研究交流を行い、グラム・バングラとの交流の深化につながった。
本ワークショップのセッションの中で、遠隔教育としての双方向メディアの開発によって、DAC諸国、新興国、そして開発途上局が同時に情報を提供しながら遠隔教育を実践していく可能性を探ることを目的として、グラム・バングラ議長であるカーン博士を招待し、意見交換を行った。
本シンポジウムには、インドNortheastern Hill UniversityのCajee博士や、チェコ共和国University of Sough BohemiaのDaněk, Grulich両博士、University of FeiburgのRüdiger博士などの参加を得て、今日の交流の源流ともなっている。
遠隔教育から水環境社会比較研究シンポジウムへ(H21年6月)
この委託事業の一環で、平成20年7月並びに平成21年2月に現地調査を行い、平成21年6月には、香川大学において、水環境社会比較研究シンポジウムを開催し、バングラデシュに関する調査研究成果の討議を行った。
このシンポジウムには香川大学教育学部人間発達環境課程の学生も参加して積極的な意見交換の場を設けることができた。
ICEDSの設立と展開
GRAM Bangla, 香川大学インターナショナルオフィス(KUIO)の協定締結
これらの達成を基盤に、2010年2月10日、”General Agreement to Establish the International Consortium for Earth and Development Sciences (「地球ディベロプメントサイエンス国際コンソーシアムの設立に関する一般協定」)”が締結され、「地球ディベロプメントサイエンス国際コンソーシアム(以下 ICEDS)」が設立された。
ICEDSは、 地球ディベロプメントサイエンス(Earth and Development Sciences)をその中心に掲げ、 多くの加入団体の相互協力を可能とする香川大学の研究協力協定の枠組に準拠するコンソーシアムである。 研究者や学生・大学院生の相互派遣や、共同研究・教育上の協力、セミナーやワークショップの開催などの活動を行うこととした。
ICEDSの展開
ICEDSは、気候変動下の水利用や水文化の研究や、バングラデシュなどアジアにおける水危機の克服のための技術研究等をこれまで展開し、香川大学中期計画・中期目標に掲げられている新たな環境社会構築に向けた取り組みにおいて、着実に実績を積み重ねている。
2013年のバングラデシュ工科大学におけるセミナーの開催をはじめ、以下のセミナーや国際学会における交流を実施した。
- International Seminar on Seeking New Way of Regional Study in Globalized World, Kagawa University, Takamatsu, Japan, 10-16 February 2010.
- The Environmental History of Europe and Japan, The Oxford-Nagoya Environmental Seminar, Nagoya University, Nagoya, Japan, 7-11 September 2010.
- International Seminar on Water Resource Management, Bangladesh University of Engineering and Technology, Dhaka, Bangladesh, 26 August 2013.
水文化・環境構築をめざすジオコミュニケーションプロジェクト
ICEDSの国際協力を背景に、 2012年度からは、「水文化・環境構築をめざすジオコミュニケーションプロジェクト(以下 ジオコミュニケーションプロジェクト)」を発足させた。
2012年度の本プロジェクトの申請書では、以下のように研究内容を規定した。
室戸ジオパークの世界ジオパーク認定や、讃岐ジオパーク設立へむけた取り組みの進展がみられる。世界ジオパーク運動の根底には、地質学的なものを含めた地域の自然的特徴が、地域の人間の生活との相互作用(ジオコミュニケーション)のもとで形作られるという認識がある。いち早く世界ジオパーク認定を得た山陰海岸ジオパークも含め、中四国のジオパークの発展と連携を支援する活動を通して、国際的普遍性を持ったジオコミュニケーション学を確立し、香川大学発の文理融合型の新たな国際的研究プロジェクトを構築・推進する。
その後、2013, 2014年度と継続、発展して毎年ジオコミュニケーションシンポジウムを開催して活動を深化させている。
香川大学の新国際戦略
これらの活動を基盤として、 2014年度からは、教育学部を主管とする「讃岐からの発信―持続的発展に寄与する水文化・環境構築をめざす国際共同研究」が香川大学国際戦略として採択された。 ICEDSはこの国際戦略の柱として活動を担っている。
本国際戦略の申請書では、以下のように規定した。
香川大学中期目標・中期計画「地域の持続的発展に寄与するため、水文化・水環境に関する調査に基づく比較研究を行う」に基づき、水資源確保、水環境保全へのとりくみを歴史に持つ讃岐発、香川大学発の研究プロジェクトとして、水文化・環境構築をめざす国際的普遍性を持った新たな文理融合型の学問体系を構築し、国際共同比較研究や学生交流を柱に、成果を海外へ発信して持続的発展を支援する。
ICEDSの研究協力の広がり
上記ジオコミュニケーションプロジェクト、国際戦略「讃岐からの発信」を通して、 ICEDSの研究協力は、GRAM Banglaと香川大学を核としながら、国内外に大きく拡がっている。
ドイツ・フライブルク大学、 チェコ・南ボヘミア大学、 インド・北東丘陵大学、インド工科大学、 バングラデシュ・バングラデシュ工科大学、 アメリカ・Eckerd College、 日本国内についても、名古屋大学環境学研究科、長崎大学熱帯医学研究所、京都大学数理解析研究所等、同防災研究所との協力が進められ、2015年以降の大きな発展の基礎が作られつつある。
ICEDSの新展開
国際シンポジウム「アジア・太平洋域の水危機に立ち向かう」
2015年2月10-12日を中心に開催されたこのシンポジウムは、ICEDSが事務局を担った。 上記のようなICEDSの国際協力の基盤の上に立ちつつ、 10名を超える海外からの研究者の参加をホストして成功させることができた。
更に、本国際シンポジウムでは、ICEDSのパートナーであるグラム・バングラのS. I. カーン博士にキーノート講演をいただいた。グラム・バングラとの連携は、香川大学の重要な取り組みに大きな貢献をしている。
上記の国際シンポジウムには、モンゴル・ネパール・インド・バングラデシュ等の研究者の協力を得ることができた。これを反映して、今回の参加者の機関などのなかには、ICEDSへの加入に前向きな姿勢を表明して機関ものもある。
このシンポジウムに向かう2月9日には、ICEDS設立協定の更新を行った。 その際、ICEDSの規程(bylaws)を確認した。規定により、積極的な運営と多くの新たな加入団体の広がりが展望でき、近い将来のICEDS加入機関の増加と交流の発展が確実に見込まれる。香川大学中期計画・中期目標に掲げられている新たな環境社会構築に向けた取り組みや、香川大学国際戦略など、ICEDSのいっそうの発展による推進が展望される。