やまじ風の研究情報
やまじ風は、愛媛県四国中央市を中心に吹く強風で、 日本3大局地風の一つに数えられています。 南風が四国の脊梁山脈を吹き超えるときに吹くおろし風の一種と考えられており、 顕著なフェーン現象を伴います。 おもに春と秋に発生します。 四国山地の法皇山脈と四国中央市のある宇摩平野のあいだには中央構造線が走り、 それによって発達した急峻な断層崖を吹き下りて来ます。
最大瞬間風速60m/sを超える事例もあり、 家屋倒壊や農作物への被害はもちろん、 人身に対する被害がもたらされることもあります。
ここでは、やまじ風に関する観測情報を提供していこうと思いますが、 今後は関連する研究の多様な問題意識についても、 少しずつ説明していく予定です。
やまじ風の研究
やまじ風の基本的メカニズムは、 有限振幅の山岳波の理論や、 障害物を超える流体が見せる「跳ね水」によって説明されます。 「跳ね水」は、 川の流れが石などを超えるときに加速する現象と同じで、 日常的にもなじみ深いものです。 風速と上空の安定度や安定層の配置によっては、 このようなメカニズムでの説明が適切な場合もあるようです。
しかし、 より具体的な諸相になると、十分な説明がなされたとは言えません。 例えば
- 観測によるとやまじ風は東から西へ広がるが、それはなぜか
- なぜ昼前後から夜間にかけてみられやすい日変化があるのか
- 気圧に振動がみられる場合もあるが、それはなぜか
- 発生前後に顕著に見られる「舞々風」の成因や分布、性質
- 海上でのやまじ風システムのふるまい
- やまじ風前線・フェーン・舞々風の分布と変動
- やまじ風における海陸分布・海岸線配置の影響
我々は、 メソスケールでのやまじ風の詳細なふるまいをいったん記述することが、 現時点においてきわめて重要だと考えています。 そのために、
- 東西数km, 南北1km程の変化を把握することのできる観測網を整えること
- メソスケール気象数値モデルを活用し、現象の特質を考察すること
- 衛星画像・離島観測により海上の観測データを得られるよう努力すること
特に、「跳ね水」の物理的イメージを大切にしながら、 やまじ風(高速気塊)・ 舞々風(高乱流エネルギー気塊)・ フェーン(高温気塊) の振る舞いに着目をすることが、 問題を理解する上で有益ではないかと考えているところです。
最近の研究論文など
やまじ風に付随する乱流現象「舞々風」とフェーンの特徴(pdf)
やまじ風に付随する舞々風に着目して、事例解析を行ったもの。 やまじ風、舞々風の発生状況を客観的基準に基づいて記述。 フェーンとのよい対応を指摘。 また、やまじ風のない舞々風事例を指摘。 やまじ風の過剰な北向き運動量を西へと逃がしていると見られる様子もとらえた。
香川大学教育学部研究報告第II部に掲載されました。
やまじ風の観測データ
われわれは四国中央市付近に、4つの観測地点を持っています。 風に加えて気温等も観測でき、 1分間隔のデータを得ることができる地点が2つ
- 三島南中学校
- 樋の口集会所
- エコトピアひうち
- 翠波高原
- 三島南中学校・樋ノ口集会所での観測データ
お世話になっている方々
これらの観測を行うために、 やまじ風対策協議会、四国中央市、愛媛県農業指導班、 四国中央市立三島南中学校をはじめ地元の皆様にたいへんお世話になっています。
データ転送装置などについては、 香川大学危機管理研究センターにもご協力をいただいています。
樋ノ口集会所の観測装置については、 京都大学防災研究所のご協力を頂きました。
この場を借りて心よりお礼申し上げます。